エジプトの行方

f0236873_0303162.jpg以前のタハリール広場。ニュースで流れている今の光景が不思議に思えてしまう自分がいます。

ここ1週間、アルジャジーラやNYTimesなどのウェブ版、エジプトに滞在中の日本人からのレポートをいろいろと毎日チェックしていました。とくにツイッターの威力には驚いています。TVや新聞の報道だけでは見えてこないもののあまりに多いことか。

カイロやアレクサンドリアなど北部のいくつかの地域では激しく衝突した一方、南部のルクソールなどはわりと穏やかで地域によって温度差があるようです。

デモが始まって1週間以上が経過しましたが、正直エジプトの人たちがここまで徹底して抗議にでるとは思っていませんでした。可能性を信じたとき、人の思いはこんなにも凄い力を生みだすのかと圧倒されています。

今年にはいって、歴史がらみのとくにフランス革命のことに触れた本を読みだし「民衆」のことを考えていたので不思議なめぐり合わせを感じます。フランス革命は声なきものたちに声が与えられた革命です。とうとうエジプトにも来たか、と思いました。

エジプトでは平日の日曜日、少しずつ落ち着きを取り戻した感がありホッとした部分もありますが、今後どうなっていくのか、問題や不安は尽きません。まだまだしばらく見守っていきたいです。
[PR]
# by iftuhsimsim | 2011-02-07 01:05 | その他

魔法も努力

『魔女の宅急便』
f0236873_12392622.jpg



これからちょっと児童書を意識的に読んでいこうと思ったのは、この間の絵本の講演会に行ったとき。子どもたちは未来の希望で、彼らにメッセージをたくす絵本にとても大きな力を感じたからでした。

そういうわけで最初に選んだのがこれです。ジブリの映画はもう何度も観ましたが、本ははじめて。全6巻いっきに読みました。原書もまた魅力たっぷりです。


この物語の好きなところは、13歳になったキキが魔女の掟にしたがって1年間別の町で修行するのですが、とにかく「働いて」生活していかなくちゃという、たくましさに満ちていることです。

何をしなくてはいけなくて、何ができて、何をやりたいのか。
独立するキキの、体当たりな感じは気持ちがいいし、不安な気持ちには共感してしまいます。いくつになっても。

ところで魔女の修行には、「まだ魔女がいて世界には不思議が残っていますよ」と人々に伝える大切な役目があること、本を読んではじめて知りました。
たしかに「不思議」のない世界なんて味気ない。ワクワク楽しいというだけでなくて、むしろ理解を超えたものをどう受けとめていくかというところが大事に思えます。
このお話では、「不思議」なキキがいつしか町の人たちにとって当たり前のようになっていくのがおもしろいです。


最後にネーミング。これがまた魅力的なのです。人や町の名前がちょっと聞きなれない響きなのだけれど、何度もくりかえし出てくるうちに、なんだか忘れられなくなってしまいます。女の子の名前にケケなんて、私には思いつけないです。
[PR]
# by iftuhsimsim | 2011-01-30 13:50 | 児童書

歴史を旅するひと

『ミシュレ』
f0236873_1374348.jpg前回の本でよく登場し、気になったフランスの歴史家がいました。ジュール・ミシュレ。「民衆の歴史」を強く主張した人です。

この本は伝記ではなく、評論でもなく、ミシュレという人物像や彼の思想の特徴を探るための覚書のような感じの本で、著作の引用も多く載っています。ロラン・バルトのせいなのか、ミシュレのせいなのか、「文学的」な書き方がなされています。


偏頭痛の持病をもっていて気難しい人、というのが第一印象でした。仕事に熱中する姿はほとんど狂気の沙汰だったようです。
ミシュレは歴史を旅して歩きます。放浪旅行する時とまったく同じように、美と恐怖という二重の感情を全身で感じながら歴史のなかを歩いていくのです。そんな様を「歴史を貪り食う」なんて表現されていました。

ミシュレは散文で、「歴史」をたびたび擬人化したりして、まるで生き物のように描いています。
歴史は植物のようにヒトツナガリニナッテ生長する。
ミシュレが考える歴史は、原因があって結果があるのではなく、植物のように方程式があって進歩していくものでした。

凝った表現は、同時代の歴史家たちから批判をあびました。確かに批判が出てきそうな文章です。でもその語り口の是非はさておき、読んでみるとけっこうおもしろいなと思いました。創作なのか学問なのか...。
[PR]
# by iftuhsimsim | 2011-01-29 17:21 | 渡り鳥の読書

平和絵本プロジェクト

f0236873_14131128.jpg東京上野にある国際子ども図書館へ、講演を聴きにいってきました。
『いま、世界の子どもの本は?』というシリーズの3回目で、今日のテーマは韓国の絵本でした。

韓国絵本の歴史はそれほど古くはありません。1960年代に生まれた人たち、つまり1980年ごろ大学生で民主化運動を経験した時代の人たちが礎を築いたといいます。むかしは学校の教師が、最近ではデザインを仕事にする人たちが絵本制作に携わる傾向にあるようです。
扱われるテーマは大きく2つあります。ひとつは、仏教や風習など自国の文化について。もうひとつは、自然との共生など社会的なテーマです。たくさんの絵本が紹介されましたが、ほぼすべての本がいずれかのテーマに当てはまっていた気がします。



後半、クォン・ユンドクさんという女性の絵本作家さんがご自身の作品を朗読してくださり、その本を出版することになったいきさつと、子どもたちの反応を語ってくださいました。

タイトルは『花のおばあさん』
従軍慰安婦だった女性の生涯を描いた実話です。クォンさんはこのテーマをどう伝えたらよいのか試行錯誤し、完成までに12冊の本が出来上がったそうです。でも一貫してこだわられた1枚の絵がありました。この犯罪が一部の人間によるものではなく、制度的な国家の犯罪だということを示す絵です。

この絵本のきっかけは、日本の絵本作家4人が提案した「日・中・韓・平和絵本」というプロジェクトでした。各国4人の絵本作家が平和をテーマに作品を作り、それぞれの国で翻訳・出版するというシリーズ企画です。
日本人作家4人のうちのひとり、浜田桂子さんが講演の最後におっしゃいました。いまの日本の子どもたちが青年になったとき、隣人の韓国や中国の人たちと真のコミュニケーションが取れるのかとても心配で、自分たち大人にできることがないか考えたのだ、と。聞いていると日本の現代史教育の問題はほんとうに深刻です。

日本の学校や、在日朝鮮学校、韓国の学校でモニタリングがあり、クォンさんは韓国や朝鮮の子どもたちに対して、日本の子どもたちがどんな感想を述べたと思うか質問されました。「日本の子はこの話を認めなかったと思う」という内容のことを言った子がどの学校にもいたそうです。クォンさんが「そんな日本人の子はいなくて、みんなと同じ気持ちだった」ということを伝えると驚いていたとおっしゃっていました。
地道だけれど、相互理解というのはこういう直接的な対話から始まるのだとつくづく思います。


『花のおばあさん』のモデルの女性は、昨年12月に亡くなりました。彼女の体調を考慮し、この絵本を韓国だけで緊急出版したときの記念会の写真があって、おばあさんがとてもにっこり笑顔だったのが印象的でした。

日本での出版は今年の3月以降。
同じ戦争犯罪は大戦以後もつづいています。ベトナムで、ボスニアで、コンゴで、イラクで。「くり返してはいけない」というメッセージが多くの人たちに伝わっていくといいなと思います。
[PR]
# by iftuhsimsim | 2011-01-22 19:06 | lecture

ドイツ絵画

f0236873_9481777.jpg丸の内にある三菱一号館美術館にいってきました。

「青騎士」とは、カンディンスキーとフランツ・マルクが1912年に編集出版した芸術年鑑のタイトルです。
目で見える形にこだわらず精神的なものを重視しよう。
「青騎士」の名のもと、同じ芸術理念に共鳴した芸術家たちが展覧会をもよおし活動しました。大戦に阻まれ3年と短命だったこの活動はしかし、後年に多大な影響を及ぼしました。

今回のこの展示は3部構成です。1901-1907の旅の時代。1908ー1910の青騎士へむかう段階。1911-1913の青騎士時代。

青騎士時代にむかうにつれ、抽象的な要素が増していきます。
私の気に入った絵が多くあったのは「旅の時代」のところでしたが、一貫して好きだなあと思ったのは色彩でした。




ポスターの絵は《印象Ⅲ(コンサート)》と題され、1911年の青騎士時代のものです。真ん中の黒く色塗りされているのはグランドピアノ。楽しげな演奏が聴こえてくるかのように、色がいきいきしていました。
[PR]
# by iftuhsimsim | 2011-01-17 10:42 | 美術館