『ミシュレ』
前回の本でよく登場し、気になったフランスの歴史家がいました。ジュール・ミシュレ。「民衆の歴史」を強く主張した人です。 この本は伝記ではなく、評論でもなく、ミシュレという人物像や彼の思想の特徴を探るための覚書のような感じの本で、著作の引用も多く載っています。ロラン・バルトのせいなのか、ミシュレのせいなのか、「文学的」な書き方がなされています。 偏頭痛の持病をもっていて気難しい人、というのが第一印象でした。仕事に熱中する姿はほとんど狂気の沙汰だったようです。 ミシュレは歴史を旅して歩きます。放浪旅行する時とまったく同じように、美と恐怖という二重の感情を全身で感じながら歴史のなかを歩いていくのです。そんな様を「歴史を貪り食う」なんて表現されていました。 ミシュレは散文で、「歴史」をたびたび擬人化したりして、まるで生き物のように描いています。 歴史は植物のようにヒトツナガリニナッテ生長する。 ミシュレが考える歴史は、原因があって結果があるのではなく、植物のように方程式があって進歩していくものでした。 凝った表現は、同時代の歴史家たちから批判をあびました。確かに批判が出てきそうな文章です。でもその語り口の是非はさておき、読んでみるとけっこうおもしろいなと思いました。創作なのか学問なのか...。
by iftuhsimsim
| 2011-01-29 17:21
| 渡り鳥の読書
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