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人生という冗談

『わたしは英国王に給仕した』
f0236873_942921.jpgこの本は映画「英国王給仕人に乾杯!」の原作で、【映画の撮影に使われたレストラン】がプラハのガイドブックに必ずと言ってよいほど紹介されています。前回にひきつづき旅の準備としての読書。せっかくならば映画を観てからこのレストランでランチでも、と思ったのですが、映画のDVDが見つからなかったので、本を買ってみました。


これからする話を聞いてほしいんだ。

こうして200ページを超えるおしゃべりが始まります。

主人公で語り手の15歳の給仕見習いは「何も見ないし何も聞かないけれど、同時にありとあらゆるものを見なきゃいけないし聞かなきゃいけない」立場にあります。
この給仕人の資質、同時に良い語り手の資質でもあります。


不幸のあとには幸福がやってくるもので、仕事がクビになって次に働き始めたホテル・パリで、英国王に給仕したスクシーヴァネク給仕長と出会います。そしてひょんなことからホテル・パリで、主人公はエチオピア皇帝に給仕した給仕人になります。

あれ?

タイトルからてっきり主人公が「英国王に給仕した」のだと思い込んでいたものだから、不思議な感覚がずっと後をひきます。なぜタイトルが「英国王」なんだと。

主人公の奇天烈な人生はとどまることを知りません。
でもいつどんなときも、英国王に給仕した給仕長のもとで修行し、自分がエチオピア皇帝に給仕したことを誇りにしています。
「私はエチオピア皇帝に給仕したのだから」というセリフは何度も繰り返されます。本当に何度も繰りかえされるがゆえ、ますますタイトルの違和感が気になってしかたなくなります。


そして最後の最後に、この世界文学全集の監督編集者・池澤夏樹さんがタイトルのことをずばり書かれていました。
タイトルのずれ(ずれているのはタイトルだけではありませんが)によって、この小説をほら話の延長上に置くことができる。大事なのは、20世紀がひどい時代だったとしても、振り返ったときに「悪くない人生だった」と言えること。


f0236873_19223031.jpg波瀾万丈な人生の浮き沈みは、この小説のように、軽い口調で愉快に語るのが一番なのかもしれません。そうすることで語り手本人が救われることもあると思います。

→こちらが小説に登場した「ホテル・パリ」。プラハの町を歩いていたら偶然通りかかったので記念に一枚。窓越しに人が見える空間はカフェのように見えたけれど、レストランかな。

ちなみに「ホテル・パリ」は映画の撮影許可を出さなかったので、映画の舞台になったのは別の豪華なレストランです。
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by iftuhsimsim | 2011-07-26 01:05 | 渡り鳥の読書
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