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アートミステリー

『フェルメールの暗号』
f0236873_9173843.jpg前回は美術研究家の謎に迫るノンフィクションでした。今回は美術史を学んだ著者が書いた、絵画をめぐるフィクションです。

主人公はシカゴ大学付属学校に通うちょっと変わった少年コールダーと少女ペトラ。子どもたちはみんな担任のハッセー先生が大好きです。むかしの偉い人が言った言葉を覚えさせるなんてことは絶対しなくて、そういう言葉を体験したり考えたりさせるような授業をしてくれるからです。

ある日、こんな宿題が出されました。家にあるアート作品をことばで説明してきてください。子どもたちは、物とアートの違いを考えることになります。そして最終的には、芸術とは何かという問いにたどり着くのです。

ちなみにこのとき出てきた言葉はピカソの言葉。「芸術とは、嘘を教えてくれる真実である」


この本は子供向けの謎解き小説で、ストーリー展開もテンポ良く、ぐいぐい読みすすめてしまいますが、論理的な推理とは言いがたい面が確かにあります。“運よく”“偶然”にもいろいろな物事にめぐりあったり、解決策がやってきたりします。それに、これまでの常識を覆すような出来事もたくさん。

なのにつまらなくないのは、そんなありえないような出来事とどう向き合うべきか、という点がこの本の重要なメッセージでもあるからです。

2人の冒険の支えとなる人物にチャールズ・フォートがいました。超常現象研究の先駆者で、実在の人物です。彼は27年かけて図書館にある古い新聞記事をしらべ、説明のつかない出来事を残らず書き写し、それを元に『見よ!』という本を出版します。ペトラはその本を偶然手に入れたのです。


たいていの人は自分の身のまわりで起こったことを、理解できる出来事にねじまげ、いいように解釈する。
冷静に物事を見ろ、というチャールズ・フォートの言葉を2人は何度も思い出します。


見方次第で、絵の見え方はどれだけでも変わっていくことを、2人の目を通して感じることができます。
もちろん世界の見え方も。
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by iftuhsimsim | 2010-12-20 09:09 | 渡り鳥の読書
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