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本の芸術家

『佐野繁次郎装幀集成』
f0236873_172582.jpg少しわかりにくいですが、本です。

サノシゲジロウとは、前回登場した花森安治さんの師匠である洋画家です。
1900年生まれ。37歳ではじめて渡仏し、アンリ・マティスに師事したそうです。

評論家の坪内祐三さんが「暮らしの手帖」の特集号で「自分の感受性だけを頼りに、花森安治を、そして佐野繁次郎を、別々に探し当てたとしたら、その若者のセンスは、新しく、たのもしい。」と書いておられました。

そこで佐野繁次郎とは誰だろうと調べてみたところ、実は彼に関する本はあまりありませんでした。

この本は、佐野繁次郎が手がけた装幀本のカタログのようなものです。
なるほど、花森安治の装幀と似た雰囲気があります。
手がけた作家は横光利一、林芙美子、織田作之助、谷崎潤一郎などなど。
独特な手書きの文字が特徴的でした。タイトルも著者も出版社名も手書き。ときどきフランス語のことばや文章が書かれていたりします。
ちなみに以前ご紹介したこちらの本の装幀も佐野さんによるものでした。
夏目漱石の『夢十夜』は、墨で "Ten Nights' Dreams Natsume Soseki" です。

本書の副題に「西村コレクションを中心として」とあるのですが、西村義孝さんはある雑誌の特集で佐野繁次郎に興味をいだき、蒐集をはじめます。佐野さんの作品は画集がなく、あっても展覧会の図録くらいだったので(今でもそう)、作品としての装幀本を集めようと思いついたのでした。
おかげで佐野装幀本をこれだけ一気に眺めることができるわけですが、相当に見ごたえがあります。


f0236873_109093.jpg右の写真は2005年に東京ステーションギャラリーで開催された佐野繁次郎展の図録です。

最初の装幀は、小林秀雄訳、A.ランボオ『地獄の季節』で、この最初の作品から佐野さんのスタイルはかなり完成されています。
用紙や刷り上がりの感触にこだわりがあったようです。
ある書評で、佐野さんの装幀について「紙なのに布としか見えない。(佐野さんはコラージュをされます。)結局ほんとうの布を使うより高くついたさうだが、装幀もここまで来ると芸術品だ。」と述べられています。

また、巻末に佐野さんへのインタヴューが収録されていて、制作上特に注意していることとして次のように答えられていました。 "この装幀は佐野繁次郎かな" と思わせる独特なスタイルは、こういう強い意識があってこそ生み出されるのですね。

しくじっていても意志がはっきりしている方がよい。いわゆる味といったもの、瀬戸物を焼いているときに現れるような効果にはたよらないことにしている。年数や慣れで、ひとりでに味が出てきたような絵は、自分のでも、他人のでも、魅力はない。
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by iftuhsimsim | 2010-07-31 09:01 | 渡り鳥の読書
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