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アヴァンギャルド

『女は下着でつくられる』
f0236873_10522972.jpgジュリア・チャイルドがフランス料理でアメリカの家庭料理に革命をもたらした1960年代。ほとんど同じ時代に日本で女性意識に革命をもたらした人がいました。
最近展覧会に行ったこともあり、彼女の本を立て続けに読んでいるので、ちょっと無理やりの(渡り鳥読書)バトンパスですが、鴨居羊子のエッセイ集をご紹介します。

3年くらい前に職場の上司と「いま読んでいる本」の話をしていた時、私は森茉莉のエッセイを読んでいました。すると翌日、きっと気に入るよと言って貸してくれたのがこの本でした。

本書は、鴨居さんが駆け出しの新聞記者だった頃のことにはじまります。小さな夕刊紙。社の一人ひとりがそれぞれの分野のすばらしい専門家であり、「真面目に」ではなく「真摯に」仕事するそんな大先輩たちから多くを学びました。彼女の「本質を見抜く姿勢」「クリエイトすること」の原点がここにあるようです。

しかし昭和20年代、大新聞が一匹狼の記者たちを飲み込んでいきます。彼女も大新聞に移ることになりますが、記者が頭脳のペンからただのペンになり下がった時代だと言っています。
そしてある日、ヤメタ!と記者生活に見切りをつけ、いよいよ下着デザイナーとしての一歩を踏み出すのです。

宣伝のための個展、斬新なファッションショー、PR映画などなど、それまでの日本にはなかったような方法でビジネスとアートを融合させていきます。
「質が高くて小さい“ロンドン・タイムス”のような会社」を理想に掲げ、デザイナーとして、商売人として、ひとりの女として、時代を鋭く見つめています。

この自らの半生を綴った彼女の文章は、笑いあり涙あり、と言えるほどすっきり単純ではありません。
まっしぐらに突き進んでいくたくましさの一方で、繊細な感性を持っている。あっけらかんとした陽気な性格でありながら、かなしい経験を背負っている。
カモイヨウコという人のなかで渦巻いているたくさんの感情が、読者の心をざわつかせます。

タンスに青春をしまわないで、今日青春を謳歌し、明日それを捨て去るためにケンカをした。
その人生のなかでたくさんのものを捨ててきたのだろう。
あえて文章に書き残さなかったこともたくさんあるのだろう。
彼女がまとう自由に、そんなことをちらりと感じたりします。
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by iftuhsimsim | 2010-06-27 11:54 | 渡り鳥の読書
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